「このキャラクター、サンリオだっけ?サンエックスだっけ?」
「すみっコぐらしとハローキティって、同じ会社じゃないの?」
かわいいキャラクターグッズを見かけるたびに、こんな風に思った経験はありませんか。
特に「サンリオ」と「サンエックス」は、名前の響きが似ていることもあり、多くの人が混同しがちです。
この2社のキャラクターは、どちらも親しみやすく愛されており、特にSNSや雑貨店ではしばしば並んで並べられるため、一部のユーザーからは「同じ会社?」という疑問が生まれています。
本記事では、そうした混乱を解消し、両社の気になる違いを徹底的に比較・解説していきます。
あなたの長年の疑問がスッキリ解決するだけでなく、それぞれのキャラクターが持つ深い魅力に、きっと改めて気づかされるはず!
サンリオとサンエックスってどう違うの?
似ているようで違う2社の関係性
一見すると似たテイストに見える「サンリオ」と「サンエックス」ですが、実はまったく別会社です。
- サンリオ
1960年創業。
代表キャラクターは「ハローキティ」(1974年登場)、「シナモロール」(2001年)、「ポムポムプリン」(1996年他)など、多くが国内外で人気を博しています。
東京・多摩にある「サンリオピューロランド」をはじめ、アニメ・ゲーム・映画展開も積極的です。- サンエックス
元は文具販売の「チダ・ハンドラー」(1932年創業)、1973年に「サンエックス」へ改称。
それ以降、「たれぱんだ」(1995年)や「リラックマ」(2003年)、「すみっコぐらし」(2012年)といった“日常に寄り添う”キャラクターを中心に展開し、大人世代の共感を得ています。
両社ともかわいらしさを軸にしており、キャラクターの丸みや色調に“映える印象”が共通していますが、企業としての背景も、目指す方向性も全く異なります。
なぜ?サンリオとサンエックスが混同されやすい2つの理由
では、なぜこれほどまでにサンリオとサンエックスは混同されやすいのでしょうか。
その背景には、大きく分けて3つの理由が考えられます。
理由1:社名の響きが似ている
最も大きな理由は、やはり社名の響きが似ていることでしょう。
「サン」から始まり、どちらもすべてカタカナで語感も近いため、同じグループ会社や関連会社だと勘違いしてしまう人が後を絶ちません。
しかし、両社の社名の由来は全く異なります。
- サンリオ

Sanrio Company, Ltd., Public domain, via Wikimedia Commons スペイン語で「聖なる河」を意味する「San río」から来ているとされています。
ロゴも河の水をイメージしたもの。- サンエックス

San-X, Public domain, via Wikimedia Commons サンエックスは公式に由来を公表していませんが、旧ロゴが人の形をしたXが3つ並んでいる、というものだったので「3人」がキーワードのようです。(立ち上げが3人だったとかでしょうか?)
現行ロゴは若々しさ、新しさ、挑戦、未来をイメージするブルーと、幸せを届ける四つ葉のクローバーをデザイン。
また、両社が現在の社名に変更したのは、同じ1973年のことでした。
これも、両社の関係性をより近く感じさせる一因かもしれません。
理由2:どちらも「かわいいキャラクター」の代表格である
もう一つの理由は、両社が長年にわたり日本の「かわいい(Kawaii)」文化を牽引してきた、キャラクタービジネスのトップランナーである点です。
文房具店や雑貨店に足を運べば、サンリオとサンエックスのキャラクターグッズが隣同士に並んでいる光景は珍しくありません。
どちらも私たちの生活に深く溶け込んでいるため、個々のキャラクターは知っていても、その所属会社までを意識する機会は少ないでしょう。
そのため、「かわいいキャラクター = サンリオ or サンエックス」という大まかな括りで認識され、両社の境界線が曖昧になってしまうのです。
キャラクターで比較!あなたの推しはどっち?サンリオとサンエックスの仲間たち
サンリオの代表的キャラクター一覧:「カワイイ」の王道と多様な世界観
サンリオのキャラクターは、明るくポジティブで、誰もが「かわいい!」と感じる王道的な魅力を持っています。
サンリオは創業以来、”かわいい”をグローバルな文化として広めることを企業理念の中核に置いています。
1974年に登場したハローキティは、ただのキャラクターではなく、世界中で愛される文化的アイコンへと進化しました。
現在では130以上の国や地域で、年間5万点もの商品を展開し、その市場規模はもはや世界的ブランドのそれと肩を並べています。
この成功の裏には、ライセンス戦略とマーケティングの緻密化があります。
体験型施設である「サンリオピューロランド」から、公式InstagramやTikTok、YouTubeを使ったデジタルマーケティング施策まで、コンテンツを多様に展開し続けています。
特に最近は、若年層を中心としたファン層の取り込みに成功し、かつて離れていた10代後半〜20代前半の支持を取り戻すなど、ブランド再活性化を果たしています。
サンエックスの代表的キャラクター一覧:「ちょっぴりネガティブ」が魅力の個性派たち
一方、サンエックスのキャラクターは、どこか物憂げで、完璧ではない「ゆるさ」や「ネガティブさ」が魅力です。
サンエックスは「肩の力を抜いて日常をそのまま愛する」ことをテーマとした、より生活に寄り添う癒し系ブランドを志向しています。
代表的なキャラクターであるリラックマやすみっコぐらし、たれぱんだなどは、まさに「がんばらなくていいんだよ」というメッセージを体現しています。
それらは”ゆるカワ”の極致とも言えるデザインと設定で、子どもだけでなく、大人や働く女性、HSP傾向の人々など、幅広い年齢層に静かに支持されています。
職場や日常のストレスから逃れたいシーンで自然に手が伸びるキャラクターとして、店舗展開やグッズ戦略でも、限定品やコラボではなく「じわじわと支持される普段使い商品」の位置づけが主流です。
両社はデザインのテイストや社名の響きに共通性を感じさせつつも、サンリオは夢と体験のプリズムを通して世界へ届ける”かわいい文化”の伝道師、サンエックスは日常のすき間に寄り添い心を癒す”ゆるかわ”の伴走者として、それぞれ別々のブランド戦略を展開しています。
企業理念で比較!サンリオとサンエックスのデザイン哲学の違い
キャラクター性の違いは、両社の企業理念やデザイン哲学に深く根差しています。
サンリオの理念「みんななかよく」:創業者の戦争体験から生まれた平和への願い
サンリオが一貫して掲げている企業理念は「みんななかよく」です 。
これは、サンリオの創業者である辻信太郎氏の戦争体験が原点となっています。
空襲を経験し、「みんなが仲良く助け合って生きていける、幸せな世界を作りたい」という強い願いからサンリオは生まれました。
この理念は、サンリオのキャラクター作りにも色濃く反映されています。
サンリオの物語には、基本的に明確な「敵役」が登場しません。
もし対立する存在がいても、最終的には和解し、仲良くなるというストーリーが描かれます。
これは、暴力を否定し、対話による相互理解を重んじるという、サンリオの強いメッセージなのです。
サンエックスのこだわり「100%オリジナル」:デザイナーの個性が光るキャラクター開発秘話
サンエックスの最大の特徴は、100%自社のデザイナーによってオリジナルキャラクターを生み出している点です。
デザイナーの個性や感性が、キャラクターに直接反映されています。
- たれぱんだの誕生秘話
デザイナーの末政ひかるさんが、パンダのキャラクター案を何枚描いてもボツになり、疲れ果てて「もうダメだ…」と思った時、描いたパンダもぐったりとたれていた。
その姿が採用され、大ヒットに繋がりました。- すみっコぐらしの誕生秘話
作者のよこみぞゆりさん自身が、電車やカフェでは必ず隅の席を選ぶ「すみっこ好き」だったことが原点。
「すみっこが好きなキャラクターがいたら、共感してもらえるかも」というアイデアから生まれました。
このように、サンエックスのキャラクターは、デザイナー自身の日常のふとした感情や体験から生まれることが多く、だからこそ私たちは「自分に似ているかも」と親近感を覚え、強く惹きつけられるのかもしれません。
社風で比較!社員の口コミで判明したサンリオとサンエックスの違い
企業の哲学や戦略は、そこで働く人々の環境、つまり「社風」にも反映されます。
ここでは、社員評価サイトのデータを基に、両社の内部カルチャーの違いに迫ります。
人材育成やワークライフバランスに違いはある?
企業の口コミサイトOpenWorkのデータによると、サンリオとサンエックスの社員評価には興味深い違いが見られます。

サンエックスは、「20代の成長環境」「人材の長期育成」でサンリオを上回っています。
サンエックスのビジネスモデルは100%自社のインハウスデザイナーに依存しています。
デザイナーの創造性が会社の生命線であり、彼らを長期的に育成し、才能を最大限に引き出すことが事業戦略そのものなのです。
「すみっコぐらし」の作者の大学に「たれぱんだ」の作者が講師として在籍していたり、才能の系譜が受け継がれるケースもありました。
社員が「人材の長期育成」を高く評価するのは、このビジネスモデルがもたらす必然的な帰結と言えるでしょう。
一方でサンリオは、「法令遵守意識」の点が突出して高いです。
これは、ライセンス、マーケティング、テーマパーク運営など多岐にわたる職種の人々が協働する、より大規模で多様な組織体制を反映しているのかもしれません。
このように、外部から見えるビジネス戦略が、社員一人ひとりの働きがいやキャリアパスにまで直結していることがわかります。
歴史で比較!サンリオとサンエックス、実はどちらも老舗企業
キャラクターのイメージからサンリオの方が歴史が古いと思われがちですが、創業年で言えばサンエックスの方が先輩にあたります。
ここでは両社の歩みを比較してみましょう。
サンリオの歴史:ギフトから始まりテーマパークまで展開するエンタメ企業へ
サンリオは、1960年に「山梨シルクセンター」として設立されました。
当初は絹製品を扱っていましたが、後に雑貨販売に転換。
キャラクターをデザインしたギフト商品で成功を収めます。
サンリオは、キャラクタービジネスを中核としながら、出版、映画、そしてテーマパーク運営へと事業を多角化させ、世界的なエンターテイメント企業へと成長しました。
サンエックスの歴史:文具メーカーから「たれぱんだ」で飛躍したキャラクターカンパニーへ
サンエックスは、1932年に個人商店「チダ・ハンドラー」として創業しました。
当初は文具店向けの卸売業が中心でしたが、次第にオリジナルデザインの文具を手掛けるようになります。
サンエックスは、文具・雑貨メーカーとしての基盤を持ちながら、「たれぱんだ」の成功を機にキャラクターライセンス事業で大きく飛躍。リラックマ、すみっコぐらしと、時代を象徴するヒットキャラクターを次々と生み出し、サンリオと肩を並べる存在となりました。
ビジネス戦略で比較!サンリオとサンエックスの稼ぎ方の違い
両社はビジネスの進め方においても、対照的な戦略をとっています。
グローバル展開とテーマパーク事業で攻める「サンリオ」
サンリオのビジネスは、自社で商品を企画・販売する「直販事業」と、他社にキャラクターの使用権を許諾する「ライセンス事業」の二本柱で成り立っています。
特にライセンス事業は利益率が高く、収益の大きな柱です。
その強みは、130以上の国と地域でビジネスを展開するグローバルなネットワークにあります。
重点地域である北米や中国ではライセンス事業が好調で、会社全体の成長を牽引しています。
サンリオのユニークな点は、「デザイン開放」と呼ばれる柔軟なライセンス方針です。
コラボレーション先企業が、キャラクターのデザインを比較的自由に変更・アレンジすることを許容しており、これが幅広い業種との協業を可能にしています。
Muramasa~commonswiki, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
さらに、サンリオピューロランドのようなテーマパークは、単なる収益源ではなく、ブランドの世界観を直接体験できる重要な場で、ファンのエンゲージメントを深める役割を担っています 。

このように、ライセンス事業でのブランド認知度向上、テーマパークでの体験価値の提供、そして直営店でのグッズ販売が相互に作用し、グローバル規模でブランド価値を高め続ける自己増殖的なループを形成しているのです。
国内市場を深耕する「サンエックス」
サンエックスの戦略は、サンリオとは対照的に国内市場に深く根差しています。
その最大の強みは、1000を超えるキャラクターをすべて自社のデザイナーが生み出している点です。
外部のクリエイターに頼らない100%オリジナル主義により、一貫した世界観と品質を保ち続けています。
事業の中心は、文具や雑貨、ぬいぐるみといったオリジナル商品の製造販売と、キャラクターデザインのライセンス展開です。
サンリオのような大規模なテーマパークは運営せず、期間限定のポップアップショップや展示イベントでファンとの接点を築いています。
このビジネスモデルは、日本の社会や文化の微妙な変化を敏感に察知し、それをキャラクターに反映させるという、非常に内省的で深いフィードバックループに基づいています。
「たれぱんだ」が生まれた背景には当時の社会の「疲れ」があり、「すみっコぐらし」には現代の若者の内向的な気質が反映されています。
サンエックスは、日本のカルチャーの深層にアクセスし、そこから共感を呼ぶキャラクターを生み出すことで、巨大なグローバル展開とは異なる盤石な地位を築いているのです。
まとめ
サンリオとサンエックスの違いをいろいろな視点から徹底的に比較してきましたが、両社の根本的な違いがお分かりいただけたでしょうか。
| 比較項目 | 株式会社サンリオ | サンエックス株式会社 |
|---|---|---|
| 代表キャラクター | ハローキティ、マイメロディ、シナモロール、ポムポムプリンなど | すみっコぐらし、リラックマ、たれぱんだ、こげぱんなど |
| 企業理念・哲学 | 「みんななかよく」 創業者の戦争体験が原点 | 「ずっといっしょに」 キャラクターグッズを通してほっとできる居場所を作る |
| キャラクターの特徴 | ポジティブで王道のかわいさ。敵役がいない優しい世界観 | ちょっぴりネガティブで影がある。完璧じゃないところに共感を生む |
| 設立年 | 1960年(前身の山梨シルクセンターとして) | 1932年(前身のチダ・ハンドラーとして) |
| 主要事業 | キャラクター事業、テーマパーク事業(サンリオピューロランド等) | キャラクター事業(文具・雑貨の製造販売、ライセンス事業) |
| 海外展開 | 積極的(グローバル展開) | 主に国内市場が中心 |
どちらが優れているということではありません。
両社は、私たちが求める異なる感情的ニーズに応えてくれる、かけがえのない存在です。
外の世界と楽しく繋がりたい気分の時はサンリオを、自分の内面と静かに向き合いたい時はサンエックスを。
その日の気分によって、あなたの「推し」を選んでみてはいかがでしょうか。
























