好きなアーティストのコンサートといえば、ファンにとってはまさに「推しに会える特別な日」ですよね!
でも、そのチケットは本当に手に入りにくい…。「今回も落選だった…」と肩を落とした経験がある方も多いのではないでしょうか?
そんな時、SNSなどで「チケット譲ります」という投稿を見かけると、つい心が揺らいでしまいますよね。
でも、その投稿には「QRごと」「番手売り」「サイチェン可」といった、ちょっと不思議な言葉が並んでいることも…。
「これってどういう意味?」「なんだか怖いけど、コンサートには行きたい…」
そんなあなたのために、今回は主にSTARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ)グループファンの間で使われるライブの専門用語と、その裏に隠された非公式なチケット取引の実態を、分かりやすく徹底解説します!
チケット取引を考えている方ご自身の身を守ることにも繋がるはずです。
なぜ専門用語が?すべては「デジチケ」から始まった
最近のコンサートでは、「デジチケ」と呼ばれるQRコードを使ったデジタルチケットが主流です。
このチケットの最大の特徴は、入場するゲートを通るまで、自分の座席がどこか分からないこと。
これは、良い席だと分かっているチケットが高額で転売されるのを防ぐための公式の対策です。
でも、この「席が分からない」という不確実性が、かえってファン独自の複雑な取引ルールを生み出すきっかけになってしまいました。
まずは基礎の基礎:ライブ用語の解説
自担(じたん)・担当(たんとう)
最も熱心に応援している特定のメンバーを指す言葉 。
「自分が担当するメンバー」という意味合いを持つ。
他担(たたん)
自担とは別のメンバーを推している人のこと。
推し(おし)
自分が推しているメンバーのこと。
「あえて選ぶならこの人」程度から、自担相当まで熱量はさまざま。
より広範なアイドルファン文化で用いられる言葉。
メンカラ
「メンバーカラー」の略。
各メンバーに割り当てられたイメージカラーのことで、グッズやコンサートの演出、ファンの服装(参戦服)など、あらゆる場面で用いられる。
特定のメンカラを身につけることで、そのメンバーのファンであることをアピールできる。
| モーニング娘。(黄金期) | Snow Man |
|---|---|
| 中澤裕子: 深緑 | 岩本照: 黄 |
| 飯田圭織: 紺 | 深澤辰哉: 紫 |
| 安倍なつみ: 赤 | ラウール: 白 |
| 保田圭: ライトピンク | 渡辺翔太: 青 |
| 矢口真里: 黄 | 向井康二: オレンジ |
| 後藤真希: オレンジ | 阿部亮平: 緑 |
| 石川梨華: ディープピンク | 目黒蓮: 黒 |
| 吉澤ひとみ: 紫 | 宮舘涼太: 赤 |
| 辻希美: ピンク | 佐久間大介: ピンク |
| 加護亜依: 水色 |
担降り(たんおり)
特定のメンバーのファンをやめること。
不祥事・熱愛・結婚報道時に多発。
出戻り(でもどり)
一度ファンをやめたメンバーを再び応援し始めること。
箱推し(はこおし)
グループ全体を応援するファン。
アニメや漫画なら、特定のキャラではなく作品全体を推していること。
アンリー
アンチ+オンリー。
自担以外のメンバーを好まない、あるいは攻撃的ですらあるファン。
魂(こん)
コンサートの俗称。
2004年のタッキー&翼春コン「滝翼春魂」で公式が使ったことから定着。
参戦(さんせん)
コンサートに参加すること。
オーラス
千秋楽。ツアーファイナルの最終公演のこと。
特別な演出やメンバーの挨拶が期待されるため、ファンからの人気が極めて高く、チケットの当選倍率も急騰する。
全ステ(ぜんすて)・全通(ぜんつう)
特定のツアーの全公演に参加すること。
多大な時間と費用を要するため、熱心さの証とされる一方で、一人で多くのチケットを確保することに対してファンコミュニティ内で議論が起きることもある 。
遠征(えんせい)
居住地から遠く離れた会場の公演に参加するために、新幹線や飛行機で移動すること。
これもまた、高いレベルの熱意と貢献を示す行為と見なされる。
新規(しんき)
ファンになったばかりのファン。
古参(こさん)
ファン歴の長いファン。
ファン歴がコミュニティ内での一種のステータスとなる場合もある。
茶の間(ちゃのま)
コンサート会場(現場)には行かず、自宅のテレビやインターネットなどで応援するファンを指す言葉。
やらかし・害悪(がいあく)
タレントの追っかけ行為や会場でのマナー違反など、ルールを逸脱した迷惑行為を行うファンを指す蔑称。
コミュニティの秩序を乱す存在として強く忌避される。
復活当選(ふっかつとうせん)
当選したにもかかわらず、入金期間内に支払いをしなかった等の理由でキャンセルとなったチケットを、落選者を対象に再度抽選するもの。
制作開放席(せいさくかいほうせき)
当初、カメラや音響機材などを設置するために確保されていたスペースが、ステージプランの最終決定後に客席として利用可能になった場合に販売される席。
これだけは知っておきたい!チケット取引の専門用語
それでは、いよいよ本題の専門用語を一つずつ見ていきましょう。
具体的な金額の相場もご紹介しますが、あくまで非公式な取引であり、公演の人気度によって大きく変動します。
同行(どうこう)
2枚以上当選した人が、余った1枚を他の人に譲ること 。
当選者と一緒に入場するので「同時入場」が必須です。
非公式取引の中では比較的トラブルが少ないとされていますが、それでも個人間のやり取りには注意が必要です。
金額相場:定価+手数料が基本ですが、人気公演では数千円~1万円ほど上乗せされることも。
QRごと(きゅーあーるごと)
入場に使うQRコードそのものを譲ってもらう方法。
売り手からファンクラブのログインIDとパスワードを教えてもらい、自分でログインしてQRコードを表示させます。
アカウント情報を他人に渡すことになるため、非常にリスクの高い取引です。
金額相場: 座席が分からない状態でも、定価の数倍、数万円単位で取引されることもあります。
サイチェン
「サイドチェンジ」の略。
入場後に、自分の席と他の人の席を交換することです。
「自担がよく来る方の席で見たい!」というファン心理から生まれた文化で、同じ公演のチケットを持つ人同士がSNSなどで事前に約束し、会場内で席を交換します。
金額相場: 同じくらいの価値の席なら無料での交換がほとんど。もし席の価値に差がある場合は、差額として数千円~数万円が動くこともあります。
番手売り
複数のチケットを持つ「親玉」と呼ばれる人が、複数の買い手を集めて行う取引です。
- 当日、親玉と買い手が全員で同時入場。
- 発券された座席券を、親玉がすべて回収。
- 親玉が一番良い席を取り、残りの席を買い手が「番手(事前に決められた順位)」通りに選んでいく仕組みです。
金額相場: 2番手、3番手といった良い順番は、数万円から10万円を超えることも。アリーナ最前列が期待できるような上位の番手は、なんと50万~70万円で取引されることもあると言われています 。
すり替え(すりかえ)
「番手売り」を悪用した、詐欺に近い悪質な行為です。
親玉は「席はどこでもいい人向け」として安く買い手を集めておきながら、入場後に回収したチケットの中から良い席だけを抜き取り、会場内で高値で転売(=中売り)。
そして、売れ残った一番悪い席を、何も知らない「席はどこでもいい」買い手に渡すのです。
中積み(なかづみ)・中買い(なかがい)
お金を払って良席と交換すること。
特に特別な公演(メンバーの誕生日やオーラス)などは良席が高値で取引されることがあります。
例えばSixTonesの2024年のライブ「VVS」のオーラスでは、アリーナ席で少なくとも5万円以上、高い場合10万~30万が提示されたこともあるそうです。
アリーナだけでなく、スタンドでも数列前に行くだけでもお金を要求されることがあります。
中売り(なかうり)
中積みの逆で、「お金をもらって良席を手放す」こと。
座席権利(ざせきけんり)
座席権利のみのお譲りとは、「その席に座る権利を譲ります」という意味で、自分が入場するためのチケットは別で用意する必要がある。
あくまでも座席に座る権利のみなので、入場特典などがあったとしてもそれは譲りませんよ、ということ。
取引種別ごとのまとめとリスク
| 手法 | 違法性 | 主なリスク | 金額相場(定価比) |
|---|---|---|---|
| 同行 | 定価譲渡はグレーゾーン。営利目的の反復継続は違法。 | 当日の待ち合わせ不履行、入場トラブル。 | 定価〜数万円 |
| QRごと | 営利目的の転売は違法。アカウントの不正利用リスクも。 | アカウント乗っ取り、ログイン情報悪用、当日入場不可。 | 数万円〜 |
| サイチェン | 金銭授受がなければ個人間の合意。営利目的は違法。 | 交換相手とのトラブル、座席価値の不均衡。 | 0円〜数万円(差額) |
| 番手売り | 営利目的の反復継続であり、違法性が極めて高い。 | 親玉による詐欺、悪質席の押し付け、高額請求。 | 数万円〜数十万円 |
| すり替え | 詐欺罪に該当する可能性のある悪質な違法行為。 | 確実に悪い席を渡される、金銭的・精神的被害。 | (買い手は)安価〜、(親玉の利益は)非常に高額 |
| 中積み | 営利目的の転売は違法。 | 交換相手とのトラブル、高額請求。 | 数万円〜数十万円 |
甘い言葉にご用心!チケット詐欺のリアルな手口
個人間のチケット取引によって良席で公演が見られるかもしれない可能性が芽生える一方で、深刻な法的、金銭的、そして個人的なリスクが潜んでいます。
ここでは、ファンが直面する具体的な危険性と、実際に発生したトラブル事例を紹介します。
チケット不正転売禁止法
2019年6月14日から「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」、通称「チケット不正転売禁止法」が施行されています。
この法律の要点は下記の通りです。
- 興行主の同意なしに、業として(反復継続の意思をもって)、元の販売価格を超える価格でチケットを転売することを禁止する 。
- 不正転売を目的としてチケットを譲り受けること(購入すること)も禁止する 。
重要なのは、この法律が転売した側だけでなく、転売目的で購入した側も処罰の対象としている点です。
違反した場合の罰則は、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方」と定められている。
実際に、STARTO(旧ジャニーズ)のコンサートチケットをめぐり、組織的に不正転売を行っていたグループが逮捕・起訴され、有罪判決を受けた事例も報道されています。
横行する手口と具体的なトラブル事例
チケットを求めるファンの切実な心理につけ込んだ詐欺行為は、特にSNSを介した個人間取引で後を絶たちません。
さらに、その手口は年々巧妙化しています。
- 代金支払い後のチケット不送付
最も古典的かつ頻発する詐欺。
SNS上で「チケットを譲ります」と持ちかけ、
銀行振込やPayPayなどで代金の先払いを要求する。
被害者が入金した途端、連絡が途絶え、
SNSアカウントをブロックまたは削除して逃亡する手口。- 偽造チケット・無効なQRコードの送付
代金と引き換えに、偽造された紙チケットや、
入場できないよう改ざんされたQRコードを送付する手口。
被害者は公演当日、会場の入場ゲートで初めて詐欺に遭ったことに気づくが、
その時点では既に犯人との連絡手段は絶たれていることが多い。- フィッシングサイトへの誘導
公式サイトを装った偽のチケット販売サイトへ誘導し、
クレジットカード情報や個人情報を盗み取る手口。
入力した情報は不正利用され、チケットが送られてくることはない 。
具体的なトラブル事例
- 事例1:大規模チケット詐欺事件
人気グループ「Snow Man」のライブチケットを譲るとSNSで偽り、
現金を騙し取ったとして男が逮捕された事件では、
警視庁は85人から合計1,000万円以上を騙し取ったとみて捜査を進めている。INTERNET Watch
SNSで見かける「ライブチケットを譲ります」に注意、アイドルファンも被害に遭った詐欺の危険性【だまされ… 警視庁駒込署は9月29日、ジャニーズのアイドルグループ「Snow Man」のライブチケットを譲渡するという嘘の内容をTwitterに投稿し、現金を騙し取った男を詐欺容疑で逮捕し…- 事例2:ファンを装った常習犯による詐欺
SNS上でファンを装い、「チケットを譲る」と持ちかけて金銭を騙し取った女が逮捕された事例も報告されている。
女逮捕、旧ジャニーズ“カウコン”チ…
女逮捕、旧ジャニーズ“カウコン”チケ譲るとウソ…SNS投稿 買いたかった女性会社員、口座に2万円を振り込む…… 埼玉県唯一の県紙「埼玉新聞」のニュースサイト。さいたま、川口、川越、熊谷、春日部、越谷、秩父など埼玉県内の事件事故、政治行政、経済、スポーツ、話題を発信。夏の高…あるケースでは、被害者がSNSで被害者の会を結成し、弁護士に相談。
集まった被害者は19人、被害総額は約46万円にのぼった。
犯人は逮捕されたものの、被害者への返金は滞っているという。- 事例3:高額転売をめぐる個人間トラブル
法律相談サイトには、「定価6,200円のチケットを10万円で買う約束をしたが、入金後に相手から『コロナで発送できなくなった』と連絡があり、返金もされない」という深刻な相談が寄せられている 。
ココナラ法律相談
法律相談 | ジャニーズチケット詐欺被害、返金と法的対応の可能性は? 2021年5月上旬、大人気ジャニーズチケット(一般枠:紙チケット)による詐欺に合いました。定価6200ですが詐欺られてしまった金額は10万です。お互いゆうちょ同士です。私が…高額な取引であるほど、被害に遭った際の金銭的・精神的ダメージは計り知れない。
公式の対応は?
不正チケットが発覚した場合の公式の対応
不正な取引に関与したファンには、法的な罰則だけでなく、運営元であるSTARTO ENTERTAINMENTからの制裁もあります。
同社は公式ウェブサイトで、不正入場が発覚した場合、コンサート会場に入場できない、入場していても退場してもらうと明言しています。

実際に、転売サイトに出品された情報を元に発信者情報開示請求を行い、出品者を特定してファンクラブから退会させるなどの措置を講じた事例があります。
苦労して手に入れたチケットが無に帰すだけでなく、将来的にファンクラブを通じてチケットを入手する道を永久に閉ざされるという、ファンにとっては最も重い代償を支払うことになるのです。
公式リセールシステム「RELIEF Ticket」
当選したものの、どうしても行けなくなった場合は、STARTO社公式のリセールサービス「RELIEF Ticket」があります。
これは、公式ルートで購入したチケットを定価(券面価格)で再販できるシステムです。
購入者はファンクラブ会員である必要もありません(リセールサービスのアカウント作成は必要)。
ただし、手数料がかかり、
出品手数料:出品したチケット券面金額の10% ※3,999円以下の場合は一律400円
購入手数料:購入したチケット券面金額の15% ※3,999円以下の場合は一律600円
決済システム手数料:購入したチケット金額の3%(チケット購入時に購入者に加算)
送金システム手数料:275円(リセール成立時に出品者に加算)
※上記手数料は2025年7月時点のもの
となっています。
つまり、出品者は定価の90%しか回収できず、購入者は定価の約18%増しの金額を支払う必要があります(中積みなどよりはよっぽど安価ではありますが)。
まとめ:大切なのは「安全なファン活動」
これほど複雑な取引文化が生まれた背景には、「大好きなアーティストに会いたい」「少しでも良い席で見たい」という、ファンの純粋で強い想いがあります 。
その気持ちは、ファンなら誰でも痛いほど分かりますよね。
でも、どんなに会いたい気持ちが強くても、一度立ち止まって考えてみてください。
その取引は本当に安全でしょうか?
高額なお金を払ったり、個人情報を渡したりするリスクに見合っているでしょうか?
トラブルに巻き込まれて悲しい思いをしないためにも、公式のルールを守り、安全な方法で応援することが、あなた自身と、そして大好きなアーティストを守ることにも繋がります。
この記事が、皆さんの楽しく安全なファン活動の一助となれば幸いです。







